<読書感想> web小説 食いしん坊エルフ
食いしん坊エルフ
web小説発のライトノベル。現在書籍販売中。
のじゃロリならぬ『ロリおっさん』が主人公なライトノベル。
あ・ら・す・G
自宅でネット小説を読んでいたはずの俺は、ふと気が付くと見知らぬ森に全裸で佇んでいた。しかも、あろうことか『金髪碧眼のエルフ幼女』に姿が変わってしまっているではないか!これはいったいどういうことか!? しかし、答えは出てこないどころか、自分が何者であるかも思い出せない始末! 助けてママン!
転生前の重要な記憶はなし! よくありがちなチート能力もありゃしない!
あるのは食欲と好奇心と行き当たりばったりな行動力!
これはヘンテコなエルフの幼女(中身はおっさん)の成長物語……なのかもしれない!
この作品にたどり着くまで
前回の読書感想文ではロリ爺なweb小説をご紹介した。
kannaka-kamisiro.hatenablog.com
今回は爺ではなく『おっさん』が幼女になるweb小説である。
正直に言ってしまうと、ナカノムラ的には当初はあまり興味がなかった。というのも、最初にこの『食いしん坊エルフ』に出会ったのは書店に単行本が並んでいるのを見かけた時なのだが、この頃ナカノムラは『小説家になろう』の小説は少し過食症気味になっていた。どうにも『転生モノ』のライトノベルを読みすぎて、そちらの方向に指が伸びなくなっていたのだ。
ただ、最近になって『おっさん』が活躍するライトノベルにはまり始め、『おっさん』をキーワードに検索をかけたところこの『食いしん坊エルフ』が再びナカノムラの前に姿を現した。
アグレッシブすぎる幼女エルフ(中身おっさん)
タイトルの通り、主人公である幼女エルフはとにかく食い意地が張っている。毒草だろうが毒キノコだろうが有害な木の皮であろうがまずは口に入れてみる。そして副作用に悶絶しながらも味を『レビュー』する。幸いにも味覚は非常にマトモなのだが、毒キノコの味にもしっかりと評価をつけるあたり、食への執念が半端では無い。
というか、行動力が凄まじい。良い子は絶対に真似してはいけない。
序盤は段ボール大好きな伝説的諜報員も真っ青なサバイバルグルメ生活を送るが、さすがに人(幼女エルフだが)としてこのままではまずいと決意して、人の暮らす街を目指して動き出す。
そして幼女エルフは『運命的な出会い』を果たし『名前』を得て、物語はようやく始まり出す。
迸る熱血、踊る桃、溢れ出す涙
あらかじめ言っておくと、ここで出てくる『桃』は二つの意味がある。
『愛と夢と希望と真実と切なさと煩悩と浪漫と世界とその他諸々』が詰まった二つの果実。『たゆんティニスト』が常に追い求める『アレ』である。
そして、リアル『桃』である。
個人的には前者の桃を推したいとは思う。事実、この作品には『愛』がつまった女性が多く登場する。書籍の表紙にも二名ほど登場している。
だが、この作品で最も注目すべき『桃』はリアルな果実の方である。
最初はコメディテイストで登場し、以降は大量生産されていく『桃』なのではあるのだが、途中からこの『桃』が大活躍を始める。
挙げ句の果てには『青春の味』がする桃が『喋り出す(男の声で)』。
この文面だけを読むとシリアスが息をしていないようにも思える。
だが、この作品は読んでみるとコメディとシリアスのバランスがちょっとおかしいレベルで纏まっているのだとよくわかる。
はっきり言うが、これは褒め言葉である。
当初はてっきりコメディ路線一直線と思いきや、序盤のとある場面で『おや?』という気分にさせ、さらにその後に待ち受ける『佳境』で読者の意識を一気に持っていく。熱い展開と哀愁漂う切ない話の流れには脱帽するしか無い。
断言しよう。
ここまで熱血し、かつ本気で泣いた作品は本当に久しぶりである。家の中で読んでいて本当に良かった。電車の中で読んでいたら、良い歳した野郎がipadを片手に突然涙を流す醜態を衆目の面前に晒していたところだ。
掛け値なしにお勧めできる作品
『おっさん』×『エルフ幼女』というキワモノにキワモノを追加したような作品ではあるのだが、もしかしたら『小説家になろう』にて最も感銘を受けた作品かもしれない。とりあえず放課後になったら既刊の書籍は買ってこようと決意している。
価格:1,399円 |