<読書感想> web小説 神様は異世界にお引越ししました
神様は異世界にお引越ししました
web小説発、現在書籍六巻まで出ているライトノベル。
主人公は『神様』なお話。
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あらすじはKOTIRA
<守っていた村が廃村に成ってしまった神様、「赤鞘」。
そんな彼の元に、異世界の主神が突然たずねてくる。
事情を聴けば、異世界は諸々あって神様不足。
是非こちらの世界に来て欲しいとのこと。
豊穣と繁栄の神である彼に、是非力に成ってほしいということなのだが……。
申し入れを受け入れ、赤鞘は異世界にやってくる。
目の前に広がっていたのは、生物の気配が薄い荒野であった。
赤鞘は助手である天使と共に、土地を復活させる為の仕事に取り掛かる。
ゆるい感じで土地運営をしたいと望む赤鞘。
だが、世界情勢はそれを許してくれそうにもなく……>
解説・感想
元人間な社畜系土地神が、異世界の主神のお誘いによって彼のつかさどる世界に向かい、荒れ果てた土地を復活させていくお話。
まず主人公である土地神の腰が妙に低い。元は少しだけ腕の立つ人間であり、特別な功績を挙げたわけでも、神様になった後でも有名になっただけでもない平社員的神様であるためか、異世界に行っても社畜根性が抜けきらない。ただ、そんな己に対する悲観はあまりなく、自分が出来る範囲を焦らずに手をつけていこうという姿勢が好ましい。
主人公を異世界に呼び込んだ主神も、神様の元締めのはずなのに妙にノリが軽く、主人公と主神の絡みが面白い。人間では推し量れないであろう神様の事情を、人間の目線で現実的(リアル)に表現しているあたりがシュールで面白い。そして神様の事情話と全くの無関係に、たまに『乳談義』をおっぱいじめ……おっぱじめる。
主人公を最初に取り上げるのは流れ的には正しく、詳しく説明するのは当然だろう。
実はこの作品の主人公、ちょっとだけ『影が薄い』。
単行本でも初期の頃は表紙に大きく登場していたが、巻が進むにつれて徐々に扱いが酷くなってくる。
主神様↓
⇦主人公の土地神様。
たまらず自分で『主役』と主張してしまうような状況。
と、いうのも、土地神様を取り巻く登場人物たちが濃いのが大きな原因。
序盤に出てくるのを取り上げるだけでも。
- 土地神様の眷属。戦闘力は超絶だが頭の中身がゆるい。そしてなぜかセリフが全てひらがな。
- 主神様の部下で、土地神様担当のサポート天使。一見まともの苦労人(ツッコミ役)だが、根っからの情報中毒者。
- 主人公の管理する土地に移住してきた、永遠のショタロリ種族。ただし、本気になるとゴブリンフォームに変身する。
序盤だけでも色々と濃いキャラが出てくるのに、話が進んでいくとこれにさらに濃いキャラが追加されていく。こいつらの話を書いていればそりゃぁ主人公の影も薄くなる。
ただ、真面目に神様としての仕事もしているので、『空気』なっていることはない。地球(日本)ではできて当たり前という(というか出来ないと仕事にならない)技量を持つ主人公が、異世界では『行き過ぎてしまった職人芸』という認識の差が面白い。むしろ、そこまで出来ないと仕事にならない地球での、土地神様の社畜具合が恐ろしい。
ナカノムラはこの作品の主人公が好きなので多く書いたが、彼を取り巻く周囲もやはり面白い。主人公が進める『やって当たり前』な仕事が、徐々に世界へ大きな影響を与えていく。
その中心にいる主人公の無自覚さ、腰の低さがまたなんとも笑いを誘う。
価格:1,296円 |